| 「おじいさんの杜」 松本記念児童図書館 ’85 | ||
・大分県別府市 ・1985年10月完成 ・鉄筋コンクリート造一部鉄骨造 平屋建一部二階建 ・児童図書館 ・483u ・設計監理 意匠:山口隆史建築設計室 構造:来馬 雅史 設備:竹田建築設備設計事務所 ・施工:三光建設工業 ・建築の目的 1984年早春、大分瓦斯(株)の会長であった松本得一翁が逝去。 翁の遺志を継ぐべく、遺族はその全遺産を寄付して財団法人を設立されました。 まだ、ちゃんとした公立図書館を持つに至っていない中小都市別府のこれからを背負う子供たちの夢がふくらむように、と自身に子供はいなかったが大層子供好きであったといわれる翁にふさわしく、児童図書館の構想が生まれました。 ・立地条件 翁ゆかりの居宅跡がこの図書館の立地の場所である700坪ほどの敷地は、JR別府駅の山側、徒歩10分足らずの所にあって、かつてから比較的敷地割の大きい屋敷町の一角にあり、この地特有の低い火山岩の石塀と、樹令100年を越えようかといったものも混ざる樹々に囲まれて、東西に傾いたゆるやかな起伏の魅力も相俟って、児童図書館にぴったりの、ゆっくり時を経た静かな環境が出来上がっていました。 ここを松本記念児童図書館と正式名称で呼ばないで「おじいさんの杜」と称するゆえんでもあります。 ・建築計画・意匠・ディテール・その他 この建物の計画は、この場所のもつ力や周辺環境にならうことから始めました。 それともう一つ、昨今の公共図書館の機能的ではあるが、フォーマルな居ずまいを正した、本は知識です!学問です!正義です!といった按配のものとは少し気配の違ったものにしようと考えました。 樹木の伐採は最少限に、開架室を中心に据え、子供たちの読書環境が室内にとどまらず、晴れた日には外部のテラスや緑陰や、石垣塀の上まで含めたこの杜全体に拡がるように意図してあります。この規模の、しかも児童図書館でのみ可能な目論見でしょう。 開架室に連なって、児童に連れ添って来た親たちが読書できる部分も用意されています。 棟続きの一番奥深い所には、翁の旧居宅の座敷廻りを解体してはめ込み、図書館活動の読書の他に種々の目的に使えるようにしてあります。 建物の意匠やディテールも、この杜との間にいさかいは似合わないと考えました。 やさしく迎える大屋根や緑を映す窓、木質系の内部仕上げ共々、できる限りニュートラルに、以前からここに在りました、といった風情が一番ふさわしいと考えました。 身の廻りにさしたる読書環境を持てなかった設計者世代の少年期は、それでも数少なく出会う一冊の本の発するエネルギーに、どれほど感動し、発奮し、情緒をゆさぶられたか知れません。 時移り、場所が変わっても、あの頃の感動は伝わるでしょうか。 ここの環境で育った子供たちの読書の記憶が、たたずまいとともに良き原風景となってくれれば、と念じています。 ・最近、文部科学省から日本での児童図書館のプロットタイプモデルであるとの お墨付きを戴いたようです。(2009年) 《掲載誌・受賞》 ・建築設計資料(建築資料研究社) 43 図書館2 ・第5回 日本図書館協会建築賞 1989 ・’87 日本建築士会連合会「私の推薦する作品」年間優秀賞 《その他の写真》 当ホームページに記載されている内容の無断転載を禁じます |
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![]() ( 写真:石松 健男 ) |
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